このネコに今度は5-HTP(ハイド・キシトリプトファンのこと、セロトニンの前駆物質)を注射すると、正睡眠はすぐに回復しますが、REMはやはりだめです。
今度は反対に、DOPA(カテコールアミン、すなわちノルァドレナリンの前駆物質)を注射すると、REMは回復するどころか、かえって増加するのです。
さらにセロトニンの合成をさまたげる抗セロトニン剤を注射すると、通常の眠りもREMも共に減少しますが、この時また5-HTPをあたえると両者共に回復するのです。
・・・こうしてみると、セロトニン(イドロキシトリプタミン、脳の化学的な刺激伝達物質として注目されているインドール化合物)は普通の睡眠をひきおこす物質と考えられています。
REMを起こすのには、さらにカテコールアミン(ノルアドレナリン)の作用が必要である、とジュベーは言っています。
そうして、セロトニンを貯蔵している神経細胞をもつ橋の縫線核を破壊すると不眠をきたし、カテコールアミンを含んでいる神経細胞のある青斑部を破壊すると、REM睡眠が起こらなくなることを観察しました。
(この青斑は、かつてある教授が、破壊によって意識喪失を起こすことを発見された場所で、今それがREM睡眠の中枢として注目されてきたのは、両者とも意識に関連するので興味深いですね)。
・・・このようにジュベーの理論では逆説睡眠(および通常の睡眠)は脳内のモノアミン(カテコールアミンやセロトニン)という物質に左右されるといいますが・・・
これと前者の低級脂肪酸やコリン作動物質説との関連がまだ部分的にしか判っていません。
これらは東洋羽毛工業の実験からも判っています。
・・・なお、REMの化学的基礎についてはまた別の機会で述べましょう。